【本日の一冊】
柴田 明夫
要するに、日本は膨大な食糧を海外から輸入しているからこそ、国内の水資源をそれほど使わずに済んでいるということだ。言い換えれば、食糧輸入を介しての世界の水に依存しているのがわが国なのである。
【感想】
本日紹介するのは、最近声高に叫ばれ始めた水資源の問題に言及した一冊です。
副題にある『水資源争奪の最終戦争が始まった』という言葉通り、今世界中で懸念されている水不足について、様々なデータを元に警告を発している一冊です。
本書には、少々ショッキングな文言が次から次へと出てきます。
P13
最近の国連の報告書によれば、「2025年までに世界人口の半分に当たる35億人以上が水不足に直面する」おそれがあるという。
P39
年間1人当たり水資源量(AWR)を見ると、日本は3300立方メートルとなり、世界平均の8600立方メートルの半分以下と、かなり見劣りがする。
P102
地球上の水資源を風呂桶1杯とすると、われわれが使用可能な淡水の量は片手ですくえる量にも満たない。
我々日本人は、日本は水の豊かな国、という想いを抱きがちですが、本書を読めばそれが幻想に過ぎない、ということを思い知らされます。
興味深かったのは、「バーチャル・ウォーター」という概念。
当然の話ですが、農作物を生産するには大量の水が必要です。
(例えば国連によれば、1kgの小麦を生産するには1,150リットルの水が必要なんだとか。)
つまり農作物の生産国は、大量の水を確保する必要があります。
逆にいえば、言葉は悪いですが、食料自給率の低い国は、大量の水を生産国に負担させているわけです。
この隠れ大量水が「バーチャル・ウォーター」または「間接水」というわけです。
日本は言わずと知れた、食料輸入国。
カロリーベースでは、自給率は40%を切っているとか。
荒っぽく言ってしまえば、日本は、残り60%を生産するための水を確保する必要がないということになります。
一方で、本書では、日本の水処理技術が、世界の水不足対策に一役買っている件にも言及しています。
例えば海水の淡水化や工業用水の再利用という面では、日本の技術は世界のトップレベルを誇っているのだとか。
ここ最近では、水関連事業のファンドが販売されていて、なかなか好評なんだとか。
こういった希望は見えつつあるとはいうものの、本書を読んでいるとなんだか近い将来が不安になってきます。
石油や電気はなくても、しばらくはなんとか生きていけそうですが、水がなければ生きていけませんからね・・・。
水大量消費国の一人として、水は本当に貴重なものなのだ、という思いを新たにさせてくれる一冊でした。
【速読のポイント】
第4章、第5章では水資源の話から少し離れ、小麦・トウモロコシなどの穀物や、石油・石炭などのエネルギー資源の話が展開されていきます。
もちろん、穀物の生産やエネルギー資源の採掘にも大量の水が使われている、ということで水とは密接な関係があるのですが、これらは第6章で紹介されている「バーチャル・ウォーター」を説明するための下地となっています。
日々の報道や、関連書籍などで穀物・エネルギー資源の争奪戦のことを知っている人にとっては、軽く読み流しても構わない章かと思います。
【こんな人に】
・水ビジネスの将来性を知りたい人
・日本は水が豊かな国だと思っている人
・真に「エコ」な人を目指す人
【関連書籍】
第4章、5章の話については、つい先日紹介したこちらの書籍を読むといいかもしれません
世界一身近な世界経済入門
関連エントリ
世界一身近な世界経済入門
【著者紹介】
柴田 明夫(しばた あきお)
丸紅経済研究所所長。
内外産業調査・分析、産業政策・国際商品市況分析の専門家。
農林水産省の各種委員会委員を歴任。
主な著書
『食糧争奪―日本の食が世界から取り残される日
『資源インフレ―日本を襲う経済リスクの正体
【目次】
序 章『世界各地で起こっている水資源戦争』
第1章『枯渇の危機に瀕する水資源』
第2章『地球温暖化がもたらす水と食糧の危機』
第3章『巨大な利権とビジネスが動かす水』
第4章『資源大量消費時代の到来』
第5章『穀物をめぐる3つの争奪戦と穀物メジャーの戦略』
第6章『水の超大量消費国・日本はどうすべきか』
あとがき『世界からミツバチが消える日』
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